。から始まる物語
永六輔著「一般人名語録」(1990)と、天久聖一編「挫折を経て、猫は丸くなった」(2016)に触発されて作った、私製一行本です。とてもでないが、およびません。
絵が浮かびますように。次の一行が閃きますように。
水だよ水、自分たちの力ではどうにもならない水に依存する稲作は、その依存性が従事者の性格にも感染し、支配する側にとってうってつけだよ。
2025-10-06 / 整:1759711350
百姓には悲鳴を上げさせておくに限る、でないと何を言い出すかわからんでの、と領主は薄笑いを浮かべた。
2025-10-06 / 整:1759710872
殿方などと言われたくなかった。
2025-10-06 / 整:1759710613
すとんと椅子に腰を落とす動作は「秒で」、ゆっくりなら「分で」、恐る恐るなら「痔で」、あ、「時で」と指示しますんで。
2025-10-03 / 整:1759454970
「雨が降り続いている」は、「雨が止まない」と同じじゃないわよ、ふたつめの文には「人」が書かれているもの。
2025-10-03 / 整:1759452372
俺がいたんじゃヅ三ソが勝てえぬ……ソーリもつらいよ。
2025-09-09 / 整:1757380795
影の中に影はできない、おれの影まで奪う気かと、首筋を通過する「ひのとり」を呪う。
2025-09-08 / 整:1757310436
別に砂や氷が欲しいわけじゃない、その下から出るもんさえ出てるうちは、ちやほやされるんだよ。
2025-08-29 / 整:1756437855
なんか最近、ネットや報道で「ヒロユキ」って名前出るの多くないすか。
2025-08-21 / 整:1755749759
どんだけ軍備があったって行動さえ起こさなければいいだって? そりゃ溜まってくればウズウズしちゃうわよ。
2025-08-15 / 整:1755263055
相場はね、死ぬ前がいちばん華やかで美しいの。
2025-08-13 / 整:1755063277
人生順風満帆、健康至極、外見まずまず、おふざけ万万、時にちょっとアンラッキー? そんな御仁が小説の何を書くというの。
2025-08-13 / 整:1755052748
30なんてどこから来た数字よ、女性の割合を目標にするなら、51.3パーセントでしょうよ。
2025-08-10 / 整:1754785363
中学生のころは、年末の紅白を見ながら、あの子もきっと恋の歌を口ずさんでいるんじゃないかと、淡い心音とともに。
2025-08-10 / 整:1754784092
「高級」なお店では、何かにつけて生モノを口にほうりこまれるから、とりあえずイヤ。
2025-08-10 / 整:1754777447
数学なんて知らないほうが幸せな人生だよね。
2025-08-10 / 整:1754777250
「会いたい」と百遍言っても叶えられないなら、別のことを言おう。
2025-08-06 / 整:1754468471
「あの子は俺のことが好きだったんじゃないのかな」と右足の爪を切りながら叔父貴は言った。
2025-08-06 / 整:1754466861
そりゃあなた、国のために何かしようという気持ちはいっさい消えたわよ、あたりまえよ。
2025-08-06 / 整:1754467876
誰でもいいから都市伝説でわたしを殺して!
2025-08-02 / 整:1754120350
詐欺めいたものに心踊らされなくなったのは、美味しさというものがわからなくなったころと重なっているようだ。
2025-08-02 / 整:1754120252
ちがうちがう、そうじゃない、「まーたひらいて」は、手のひらだよ。
2025-07-29 / 整:1753757667
道端で拾ったカメに、「この大馬鹿もんが」と叱りながら、真夏の宵は得るものもなし。
2025-07-29 / 整:1753757403
たったひとつの言葉で私の「先生」になった中学時代の山田くんは今頃たぶん、岸田元総理に扮したロバート秋山さんにそっくりなんだろなと考えながら、かき氷の頭痛に耐えている。
2025-07-29 / 整:1753756993
掛け金の半分を超えてピンハネされる宝くじが、ギャンブルの中ではカタギの世界にいちばん近くて安心安全。
2025-07-26 / 整:1753495381
「お前」と呼んでくれる人がいなくなった。
2025-07-26 / 整:1753494335
漢字変換のときに出る候補順位を見られるのが少しイヤ。
2025-07-26 / 整:1753494177
待合室で支払いまでの間に、告げられた病名をスマホで検索している、好かん患者。
2025-07-23 / 整:1753233917
手相見の老姉妹が、いまごろコロナをうつし合っていて困る。
2025-07-23 / 整:1753233607
いつもの占い師に持参した赤ワインを差し出したら、ラベルを見て机の下からひと回り大きめの水晶玉を取り出してきた。
2025-07-23 / 整:1753231516
遠ざかる子ども神輿の「ワッショイ」の掛け声も、軒先でのお布施のたびに高くなる。
2025-07-23 / 整:1753229626
カエルは実に失礼なやつであることがよくわかった。
2025-07-23 / 整:1753229394
お日様のいる向きはどうあれ、閉め切った部屋の中では灯りの位置で明と暗が決まるけど、その灯りはおろかお日様とて本当のところはわかったものじゃない。
2025-07-19 / 整:1752876860
空気って、酸素分子と窒素分子が引力で引きあって、小さなかたまりになるはずじゃないの、といぶかる物理音痴のわたし。
2025-07-17 / 整:1752739011
7月の雨は、だれも言い当てることはできない。
2025-07-17 / 整:1752734579
お金が増えれば MUST も WORRY も増えるけど、金がないのに、こいつらだけ増えるとは始末が悪い。
2025-07-17 / 整:1752716652
何にでも相性というものがあるらしく、うちの猫は爪研ぎ板にもうるさい。
2025-07-17 / 整:1752715175
なつかしさもワインの熟成と同じで、いいものには長い時間がかかる。
2025-07-17 / 整:1752714831
開発や気候変動のせいで地上から姿を消す植物が、じつは人類のダイイングメッセージを代筆しているにすぎないという事案。
2025-07-17 / 整:1752712963
久しぶりに会った知人は、議員選挙の候補者と同じ顔つきをした。
2025-07-16 / 整:1752713932
ブリの切身をフライパンに押し付けて焼くとき、かすかな香りとサディズムに満たされる。
2025-07-15 / 整:1752568683
青い空に舞う白い雲ならメガネがなくてもはっきり見えるのに。
2025-07-11 / 整:1752236089
「これでも昔は街で宗教に勧誘されたりもしてたんだ」とホームレスのじいさんが背筋を伸ばした。
2025-07-11 / 整:1752211213
国政選挙が近づくと、ラジオの生番組からゲストが消える。
2025-07-11 / 整:1752204002
昔なつかしの通学路を歩いていて、もらい事故にあった。
2025-07-10 / 整:1752122773
観光客という存在になりたくない。
2025-07-08 / 整:1751933405
花粉症のミツバチという気の毒なやつも、顔には出さないけど、どこかにいるはず。
2025-07-07 / 整:1751850145
助けてくれる人は、不幸な身のうえ話など耳に入っていない。
2025-07-06 / 整:1751771652
口ぐせを笑われる程度には、ふだんから話を聞いてもらえているようだ。
2025-07-06 / 整:1751770419
いい? おじいちゃんはボケてるの、オバちゃんには、ちゃんとそう言うのよ。
2025-07-05 / 整:1751683268
よし書こう、お返事を、50年前のぼくが待っているんだ。
2025-07-03 / 整:1751436605
「もう待てない」じゃないでしょ、「持たない」でしょ、と女が手厳しい。
2025-07-02 / 整:1751434948
花言葉をミツバチが口ずさむ。
2025-07-02 / 整:1751435070
廃墟への潜入取材で目立つのは、薄光りする男子用小便器。
2025-07-02 / 整:1751433674
「自信がなくなった」と店を閉める占い師に虚実の両方を感じる。
2025-07-02 / 整:1751429282
地の文を断ち落とし、用語を差し替え、プロットを変更し、あげく全面改稿てか。
2025-07-02 / 整:1751425693
ヘリから母校が見える。
2025-07-02 / 整:1751425008
件の51兆円についてだが、半分は君の気持ちのために、残りは自分の気持ちのために使うことにした。
2025-07-02 / 整:1751424650
わが身の不幸を少し脚色してみる。
2025-07-02 / 整:1751424101
宇宙人が存在しても地球に来ることはないし、イーロンがわが家のドアをノックすることもない。
2025-07-02 / 整:1751416998
うれしいことに、爪を切るのが上手になったと施設の職員さんからほめられました。
2025-07-01 / 整:1751436248
自転車の俺に追い抜かれたおっさんが手前の後頭部をなでているかと想像して腹を立てている。
2025-06-30 / 整:1751324515
恋は病に違いない。
2025-06-30 / 整:1751324359
「自分、悪行ざんまいのころが、いちばん売れてましたわ」と芸人がつぶやく。
2025-06-29 / 整:1751180610
人の気配に何度も振り返って歩いた通学路も、タクシーの運転手になった今はバックミラーがあるから大丈夫。
2025-06-27 / 整:1751009867
戦いを終わらせるのは「あの一発」じゃなくて外交でしょ、ボクシングじゃあるまいし。
2025-06-27 / 整:1750991863
相撲甚句の声が、たまに裏返る。
2025-06-27 / 整:1750991127
子どものころ、そこらじゅうのすき間に未来が見えて、そこに詰め込んだものを、いまさがしている。
2025-06-27 / 整:1750990580
野暮用に ツバメ横切り 引き返す。
2025-06-27 / 整:1750986198
「50年後のぼくへ」と書かれた古い封筒が物置から出てきたので開いてみると、「読んだらすぐにお返事ください」とあった。
2025-06-27 / 整:1750984384
白いフェンスの向こうに芝生が続いてるのが見えたら、そこに何かを浮かばせながら、口笛まじりに歩く。
2025-06-26 / 整:1750924859
金魚は「気は触れてません」とのことでした。
2025-06-26 / 整:1750923155
他課からの上司の朝礼では、どうか「笑いどころ」を入れないでほしいと願うばかりだ。
2025-06-26 / 整:1750903176
亀とカメムシはきらい合っている。
2025-06-26 / 整:1750902639
「さいきん元気?」で始まり「お仕事、またお願いするかもです」などと結ぶメッセージがたまに来る。
2025-06-26 / 整:1750902620
「笑ゥせぇるすまん」に会いたい。
2025-06-26 / 整:1750902581
先物がどうのこうのという電話に「じゃあ千円分で」と答えたら、舌打ちの直後に切られた。
2025-06-25 / 整:1750834169
街頭演説で他党をやり玉に挙げる候補者が、ときどき半開きの口で手元のカンペを確かめている。
2025-06-25 / 整:1750833076
「あたしのどこが悪いのよ」と詰め寄ってきたから、微笑んで首をかしげたら、どこも悪くないという意味にとらえられたようだ。
2025-06-25 / 整:1750811580
「ここは変な人が多いからあっちに行こうよ」と、あいつの誘う方角のほうがよっぽど危険。
2025-06-25 / 整:1750811160
中年太りのせいで背中の鬼子母神の人相が変わっていないか気になってしょうがない。
2025-06-25 / 整:1750810959
「特にあの茶色のでかいやつが寄ってくるんだよ……ほら来た」と、公園のオッサンが不揃いの歯を見せた。
2025-06-25 / 整:1750810588
君の身体に初めて触れたのは、指じゃなかったね。
2025-06-25 / 整:1750774406
「今度ふたりで……」が口ぐせの彼に、「もうすぐ三人よ」と返した。
2025-06-25 / 整:1750773471
市立図書館の受付係さんの指が美しい。
2025-06-24 / 整:1750773996
「私のどこがいいの?」と聞くから「あしたこの場所で言うよ」と答えた。
2025-06-24 / 整:1750773219
地球温暖化対策についての緊急講演のあとは、楽屋に差し入れられた桜餅で舌鼓を打つ。
2025-06-24 / 整:1750772116
「バナナのあのしなりはちょっとないな」と半切り名人のこだわりが半端ない。
2025-06-24 / 整:1750732908
このごろ、よく身の回りで生き物が死ぬ。
2025-06-24 / 整:1750732263
その村人がひと月に使う語彙は、おどろくほど少ない。
2025-06-23 / 整:1750661604
「あるある」が繰り返され、異を唱える者がいなくなった。
2025-06-23 / 整:1750659924
ダンゴムシが丸みを解くタイミングも十人十色。
2025-06-23 / 整:1750659003
ある記者の質問によって、会見会場から退席する者が出始めた。
2025-06-23 / 整:1750643364
つまるところ、詐欺師は魅力的だってことね。
2025-06-23 / 整:1750632575
ゴーヤのカーテンを育てている老夫婦の午後はもの静か。
2025-06-22 / 整:1750562787
固まっているのが怖いので、みじん切りを小出しにされるほうがいい。
2025-06-22 / 整:1750561869
50年以上も顔を見ていない同級生の女子が、夢の中で仕切っている。
2025-06-22 / 整:1750560858
「ロウソクの数ねえ……」と薄笑いを浮かべられる歳になっている。
2025-06-22 / 整:1750559236
小銭が溜まりすぎた神社の妙案、それはお釣りの出る「賽銭券」の自販機を置くことだった。
2025-06-21 / 整:1750488913
「そんなのウソよ」と脇に座る息子の顔を見上げたら、神様の目つきをしていた。
2025-06-21 / 整:1750479712