人の気配に何度も振り返って歩いた通学路も、タクシーの運転手になった今はバックミラーがあるから大丈夫。
2025-06-27 / 整:1751009867
戦いを終わらせるのは「あの一発」じゃなくて外交でしょ、ボクシングじゃあるまいし。
2025-06-27 / 整:1750991863
相撲甚句の声が、たまに裏返る。
2025-06-27 / 整:1750991127
子どものころ、そこらじゅうのすき間に未来が見えて、そこに詰め込んだものを、いまさがしている。
2025-06-27 / 整:1750990580
野暮用に ツバメ横切り 引き返す。
2025-06-27 / 整:1750986198
「50年後のぼくへ」と書かれた古い封筒が物置から出てきたので開いてみると、「読んだらすぐにお返事ください」とあった。
2025-06-27 / 整:1750984384
白いフェンスの向こうに芝生が続いてるのが見えたら、そこに何かを浮かばせながら、口笛まじりに歩く。
2025-06-26 / 整:1750924859
金魚は「気は触れてません」とのことでした。
2025-06-26 / 整:1750923155
他課からの上司の朝礼では、どうか「笑いどころ」を入れないでほしいと願うばかりだ。
2025-06-26 / 整:1750903176
亀とカメムシはきらい合っている。
2025-06-26 / 整:1750902639
「さいきん元気?」で始まり「お仕事、またお願いするかもです」などと結ぶメッセージがたまに来る。
2025-06-26 / 整:1750902620
「笑ゥせぇるすまん」に会いたい。
2025-06-26 / 整:1750902581
先物がどうのこうのという電話に「じゃあ千円分で」と答えたら、舌打ちの直後に切られた。
2025-06-25 / 整:1750834169
街頭演説で他党をやり玉に挙げる候補者が、ときどき半開きの口で手元のカンペを確かめている。
2025-06-25 / 整:1750833076
「あたしのどこが悪いのよ」と詰め寄ってきたから、微笑んで首をかしげたら、どこも悪くないという意味にとらえられたようだ。
2025-06-25 / 整:1750811580
「ここは変な人が多いからあっちに行こうよ」と、あいつの誘う方角のほうがよっぽど危険。
2025-06-25 / 整:1750811160
中年太りのせいで背中の鬼子母神の人相が変わっていないか気になってしょうがない。
2025-06-25 / 整:1750810959
「特にあの茶色のでかいやつが寄ってくるんだよ……ほら来た」と、公園のオッサンが不揃いの歯を見せた。
2025-06-25 / 整:1750810588
君の身体に初めて触れたのは、指じゃなかったね。
2025-06-25 / 整:1750774406
「今度ふたりで……」が口ぐせの彼に、「もうすぐ三人よ」と返した。
2025-06-25 / 整:1750773471
市立図書館の受付係さんの指が美しい。
2025-06-24 / 整:1750773996
「私のどこがいいの?」と聞くから「あしたこの場所で言うよ」と答えた。
2025-06-24 / 整:1750773219
地球温暖化対策についての緊急講演のあとは、楽屋に差し入れられた桜餅で舌鼓を打つ。
2025-06-24 / 整:1750772116
「バナナのあのしなりはちょっとないな」と半切り名人のこだわりが半端ない。
2025-06-24 / 整:1750732908
このごろ、よく身の回りで生き物が死ぬ。
2025-06-24 / 整:1750732263
その村人がひと月に使う語彙は、おどろくほど少ない。
2025-06-23 / 整:1750661604
「あるある」が繰り返され、異を唱える者がいなくなった。
2025-06-23 / 整:1750659924
ダンゴムシが丸みを解くタイミングも十人十色。
2025-06-23 / 整:1750659003
ある記者の質問によって、会見会場から退席する者が出始めた。
2025-06-23 / 整:1750643364
つまるところ、詐欺師は魅力的だってことね。
2025-06-23 / 整:1750632575
ゴーヤのカーテンを育てている老夫婦の午後はもの静か。
2025-06-22 / 整:1750562787
固まっているのが怖いので、みじん切りを小出しにされるほうがいい。
2025-06-22 / 整:1750561869
50年以上も顔を見ていない同級生の女子が、夢の中で仕切っている。
2025-06-22 / 整:1750560858
「ロウソクの数ねえ……」と薄笑いを浮かべられる歳になっている。
2025-06-22 / 整:1750559236
小銭が溜まりすぎた神社の妙案、それはお釣りの出る「賽銭券」の自販機を置くことだった。
2025-06-21 / 整:1750488913
「そんなのウソよ」と脇に座る息子の顔を見上げたら、神様の目つきをしていた。
2025-06-21 / 整:1750479712
「君の分まで生きるから」なんて、別に言われたくないし。
2025-06-21 / 整:1750479278
気球の飛ぶ高さを決めてから冒険と名付ける。
2025-06-21 / 整:1750478981
1行目だけは発作的に書こうと考え……あ。
2025-06-21 / 整:1750478603
「貴金属を買い取ります」のチラシが、うちのポストにも入っていた。
2025-06-20 / 整:1750381277
目覚めたとき枕だけが味方だった。
2025-06-20 / 整:1750380927
村祭りの朝は肌寒い。
2025-06-20 / 整:1750378613
登校時にすれ違う女の子は、俺の顔を見るたびに肩のランドセルを直す。
2025-06-20 / 整:1750380689
「文句を言わんのが賢いんさ」と、医院の待合室で爺さんが振り向いて金歯を見せた。
2025-06-20 / 整:1750380296
「利益」の先頭に「ご」を付けると読みが変わり、「休憩」の先頭に「ご」を付けると意味が変わった。
2025-06-19 / 整:1750339415
個体の移動を放棄した植物というヤカラは、進化も遅く、なまくらで、地上でもっとも成功している。
2025-06-19 / 整:1750293639
いまだに鉛筆とソロバンを使っている駄菓子屋の婆さんは、停電の間、独り勝ちを続けていた。
2025-06-19 / 整:1750293439
ルールなんてないの。句点をひとつだけ最後に付けること、それだけ……あ。
2025-06-19 / 整:1750292527
今度は何を助けるのかと、目線を足元にやりながら歩く。
2025-06-19 / 整:1750292328
あれが伝統文化だなんて、あの人たち、言っててはずかしくないのかしら。
2025-06-19 / 整:1750291992
恩師の家がチラシの売り物件に出ている。
2025-06-18 / 整:1750213730
「ごめんね、ごめんね、ごめんね」と、彼女の声は真新しくても、頬を流れる涙の位置はもう知っている。
2025-06-18 / 整:1750213316
「オッカムの剃刀」を「オカミ」と略すしたり顔。
2025-06-18 / 整:1750212661
「どうしてそんなこと言うの」と君は泣くけど、出まかせが当たってしまった君と僕のせい。
2025-06-18 / 整:1750210924
「罪」と「扉」は字が似ていると君が言ったから、僕は真剣にふたつの共通項を探した。
2025-06-18 / 整:1750210736
文明は、エントロピー増大の流れに逆らう異物であるから、時間という主宰からはつねに断罪を受け続けている。
2025-06-17 / 整:1750165754
見知った顔だけが歳をとっていく。
2025-06-17 / 整:1750148366
「おとうさんがおかねもちになりますように」と、20年前に息子が書いた短冊が、茶褐色に割れている。
2025-06-17 / 整:1750148042
スーパーで旧友と長い立ち話のあと、別の売り場で会釈だけしてすれ違い。
2025-06-17 / 整:1750147528
「血管年齢は20歳代」と診断されたアラ還のじいさんが、ふた回り目もいける気になっている。
2025-06-16 / 整:1750058872
火星の土地が坪いくらだなんて、そりゃ眉唾ものじゃないのと言ったけど、婆さんは引かない。
2025-06-16 / 整:1750058534
51兆円の資産を使い切る方法を考えてやったが、米や味噌ばかりでは胃がもたれるし、結局、買えるのは会社しかないと返信して不採用。
2025-06-16 / 整:1750056990
「我々ほど危険な者はいない」と、仏陀の一番弟子たちは念を押すべきだった。
2025-06-16 / 整:1750054013
相手の頭を見て、ほめ言葉は平凡なものに限ると思い知った。
2025-06-16 / 整:1750053333
だれだって「あんた、ほんとは何してる人?」と聞かれるのがうれしいんでしょ?
2025-06-16 / 整:1750036973
「これでも昔は女優だったのよ」と、つま先でひと回りした婆さんが、コケたのは演技だと言い張る。
2025-06-16 / 整:1750036025
決定打は、あなたがウソを言ったことではなく、私にその理由付けができたこと。
2025-06-16 / 整:1750033973
毎朝見てるのは、鏡じゃなくて自分の顔だから、曇っていても平気。
2025-06-15 / 整:1749953110
SNSでは、何とかしてバズりたい投稿者と何とかしてバズらせたい運営側の思惑が一致して、まるで生殖の営みのようだ。
2025-06-14 / 整:1749875283
「お前もスケベだねえ」が、ほめ言葉になるお年頃。
2025-06-14 / 整:1749870696
「ほんとは待ってなんかいなかったんでしょ」と、ぜんぜん当たらない占い婆さんの言葉が、次の自分を作ってくれる。
2025-06-14 / 整:1749866927
宗教の勧誘を、パーか詐欺かで区分するのはよしてくださいと、Qがうそぶく。
2025-06-14 / 整:1749865318
「女はいくらでもウソをつく」は間違いだったと女が訂正していて、論理のマトリョーシカを脱がすことができない梅雨間の寒空。
2025-06-13 / 整:1749866034
別れたあとでも、彼女が部屋の鍵を変えていないのは、きっとケチだからに違いない。
2025-06-13 / 整:1749798658
若者の住んでいたアパートで飼われていたオウムは、遺族が連れて帰ろうとすると「きょうもがんばるぞ」を繰り返した。
2025-06-13 / 整:1749797675
手品師のとなりになった霊媒師の楽屋からせきばらいが聞こえる。
2025-06-13 / 整:1749783133
杉の年輪は、同心円なんかじゃない。
2025-06-12 / 整:1749713020
ひさしぶりに同窓会で会った元イジられキャラのひろし君の口ぐせは「そんなの宇宙人から見れば……」だった。
2025-06-12 / 整:1749712658
わたし、カラスの言葉なら半分くらいはわかるから、と妹は言うが、信用できない。
2025-06-11 / 整:1749743597
ママ友同士の「子ども褒め合いマッチ」では、先に「それに」を言ってしまったわたしの負けみたい。
2025-06-10 / 整:1749562267
ミステリー小説を読み終えたあと、妻の手料理の食材をいちいち問うている。
2025-06-10 / 整:1749561809
地区の老人たちで作る「おしゃべり会」から帰った母が黙り込んでいる。
2025-06-10 / 整:1749521419
副詞は「まれに」文章に害を為す。
2025-06-09 / 整:1749520666
道路の真ん中を歩いていたカメを助けて脇の草むらに置いてあげたその日いちにち、恩返しを期待している自分がいる。
2025-06-09 / 整:1749457603
「あ、そうか」とつぶやいた夫はいつも、そのあと何を言っているのかわからない。
2025-06-09 / 整:1749454946
卑猥なことばを書いて、読み上げソフトの女性の声に読ませてよろこんでいる。
2025-06-09 / 整:1749452375
見慣れない風景と聴き慣れた音楽の組み合わせが陶酔感をくれる。
2025-06-08 / 整:1749383879
近くの田んぼに落ちたヘリを見に行く前に、母は着替えをした。
2025-06-08 / 整:1749383919
いくら絵になるからって、殴っちゃあだめですよ。
2025-06-08 / 整:1749383667