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ミステリーの推敲のしかたも書いてほしい
2019年5月3日(金)

『ミステリーの書き方』という大部の文庫が、幻冬舎文庫から2010年に出ていて、それを自分は古書店で108円(税込)で買い求めました。
本の中で、作家の小池真理子さんが「比喩は劇薬」などという(暗喩を含む)自己言及的な見出しで、実例を交えつつ、比喩について14ページばかりお書きになっていました。
最後の「引用例(D)『青山娼館』/角川文庫p.294」では、小池さんのご自身の文章を揚げて、好例として引用されているらしいのですが、一見してあまりにひどく乱れた文章に思われたので、推敲する気持ちを抑えることができませんでした。で、じっさい推敲してみました。
この箇所を選んだのは、小池さん本人であってわたしではありません。したがって、全文引用させてもらうことにします。改行はなりゆきで、ルビは省略してあります。


【小池バージョン】
さあっ、と乾いた風のような音がしたと思ったら、その時、窓の外で雨が降り出した。雨は庭の木立の葉をたたき、草を濡らし、湿った土の香を立ち上らせた。
わたしたちは、雨が作る水の檻の中に閉じ込められたまま、深くつながり続けた。
一回腰を動かすたびに、わたしは思った。「生きている」と。「生きていたい」と。
生きている、生きていたい、生きている、生きて生きたい……。呼吸が烈しくなり、喘ぎ声が喉の奥からもれてくる。肘掛け椅子の脚がぎしぎしと鳴る。
わたしたちは噛みつきあうようなキスをする。性と性、生と生がぶつかり合う。
水の音をぬうようにして、遠い雷鳴が聞こえている。

 

【自分バージョン】
風の音がした、と思ったら次に雨が来た。
木立の葉をゆらせ、地面に叩きつけると、入れ替わるように土の香りを得る。
わたしたちは、かまわず繋がり続けた。風の嘯きも水の檻も、わたしたちを止めることはできない。

(中略)

椅子が鳴っている。呼吸がそれに続く。音とにおいの中で、わたしたちは生きていた。いまさらながらの深いキス。だがそれは、性と性が結びつき、生と生がぶつかり合うための必然なのだ。
雨の音の中に、遠く雷鳴が混じる。
のけぞった喉で、「雷」と、つぶやいてみた。

 

ラストシーンらしいです。肝心な大団円なのでしょう。
「さあっ」とは何でしょうか。雨が降るのに「窓の外」は要りますか。「雨が作る水の檻」では、暗喩がぐらつく。ここでは「水の檻」の一手でしょう。「ぎしぎし」は先の「さあっ」と何か連絡しているのでしょうか。
そもそも、この人は、「吹く風」「叩く雨」「立ち上るにおい」を性行為と並んで走らせ、それを暗示させるつもりで書いたのではないのですか。ならば遠雷は、大きな意味をもつでしょう。

わたしは読書家ではありませんし、聞き手でもありません。末端のことばのちいさな消費者です。でも、あまりにひどいものは、生産者側でつまみとってほしいと願っています。

 

Update:2019-05-03 Fri 12:33:26 ページトップへ
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