グーグルマップの画面の左端には、尺度を変えるスライダーがあって、その上側に人型をしたオレンジ色のアイコンみたいなやつがキヲツケをして立っています。
こいつは、ペグマンと呼ばれているらしいんですね。マウスカーソルをかぶせると、即座にすたっといきり立ってスタンバイする、なかなか愛いやつです。そのまま地図上の道路までドラッグすると、指定の場所でなら、360度のスコープで周囲の景色が見られるという按配です。
なんでこんなことができるかというと、事前に、グーグルの息のかかった自動車が、車載カメラを積んで走りながら周囲を撮影しまくって、その画像データをグーグル社のデータベースに蓄積しているからなんですね。
以前は、都市部など限られた場所の道路でしか対応できていなかったのですが、この春ごろから対象地域が一気に広がりました。ここ伊勢平野界隈では、車どうしのすれ違いがやっとこさという細い道路でもグーグルカーが入ってきているようです。
知らぬ間に、きゃつめは拙宅の前の小路も通ったようでして、さぐってみると案の定、門柱に埋め込まれた表札や風になびく洗濯物など、つましい生活ぶりが惜しげもなく晒されておりました。
自由に見られるということは、自由に見られるということ。
意を決した自分はマウスを持ち直し、グーグルカーのあとをつけるような心地で、気になる場所を片っ端から覗いてみたものでした。
かつて在籍していた大学のキャンパス。昔の彼女の実家。高校。昔の昔の同級生の女の子の実家。スキー場。鈴鹿サーキット(コースの上も!)。下宿していた京都八瀬。
人はこんなとき、どこを見ようとするのでしょうか。
これから見る風景よりも、これまで見た風景を思う時間が長くなりました。