Twitter に書いたのと、ほぼ同じことが出ています。
『超訳ニーチェの言葉』白取春彦・訳。十年前の本で、ブックオフで百円でした。嫁が卓袱台で前かがみになり、むさぼるように頁をめくるのが気にかかる。こっちは風呂やトイレでの手置き用に買い求めただけなのに。超訳なので今風。スマホ依存とか出てきそうな。神は死んだと叫んだ人の声は低くも重い。
騎士団長殺し第1部・同第2部読了。千四十八頁。文章がだめでもストーリーがあるさ。異形の結末を願って終盤まできたが、作者さん、どうやらそのまま店じまいの模様で、ゴザを巻き始めてござる。イデアや観念や「なぜか……」を多用しているなら何でも書けたのに。魅力的な登場人物たちがかわいそう。
村上春樹『騎士団長殺し第1部顕れるイデア編』とりあえず300ページまで読んで途中感想。身辺雑記に映る括弧書き。意味ありげに振舞う傍点。「まるで……みたいに。」を繰り返す直喩。意図してか、中学生に読まれることを意識したような大味な表現が随所にある。このあとのストーリーには期待する。
ラジオ放送で、高橋源一郎さんが寺山修司の著書「青少年のための自殺学入門」に触れていた。1979年初出。理由のある自殺は他殺に他ならないと慧眼。彼のように自由に言葉を操りたい。断言すれば真実に近づく。病をもつことは滑稽のひとつである。おたまでカレーをよそうとき逃げるお肉は憎らしい。
通勤途上の車の運転は、傍で見ていても怖い。左様にルーチンは人間から考えることを奪うのだろう。勤め人がいつも同じ階でエレベータを降りて「おはようございます」と事務所のドアを開く。そんな毎朝の繰り返しとマイカー通勤を混同しないでほしい。この行為はその都度、危険な冒険に満ちているのだ。
井上章一『狂気と王権』。心療内科の待合室に置いてあったので、続きを図書館で借りて読んだ。二十年以上前に出た本だけど、この前の付属中学校での建造物侵入事件にも通じそう。筆者の癖なのだろう。検証を待つだの想像に過ぎないだの、言い訳が随所にある。後半は紙幅を増すためか、付け足しの印象。
日向初美。恋かなつかしさか後悔か安堵か。ピアノの鍵盤を押せば出る音のように、人の心はどれかに収束されますか。キーボードが提案する誤変換がいまいましい。ぼくは恋の話をしているんだよ。たしかに猿が書いている。だけど推敲するのは人だ。書けるのは朝方だから。見なかったきみの夢と朝露の内。
ひまわりは咲いていなかったけど、たしかに小道だった。待ち伏せていたわけじゃなかったから、ぐうぜんの出会いだった。六月の浜道は猫の口のにおいがした。それもあなたの中に生きてはいまい。三途の渡し守に胸を反らして告げたい記憶も、いまにぼくから抜ける。笑われた者だから、塚でも建ててくれ。
田舎の道は車天国。一時停止も踏み切りも横断歩道もなき如し。人目のない所でこそ人間性が露わになる。飛び出すな車は急に止まれない。これは歩行者の標語であって、運転者が脇から寄って一緒になって唱和してどうする。お前が言うな。運転者は、なにが何でも止まれ、だよ。なにが何でも止まれ、だよ。
幻冬舎文庫『ミステリーの書き方』の517ページに、小池真理子氏の「引用例(D)『青山娼館』/角川文庫p.294」が載っている。ご当人が好例として選んだ自慢の比喩らしいが、ひどい文章であって、推敲する気持ちが抑えられない。で、じっさい推敲してみた。「ことばのちから」に掲載しました。
上田岳弘『ニムロッド』読了。自分の名前に似た歴史上の人物を連想し妄想する同僚、虚業にも似た仕事の成功体験にも実感を持てない恋人、無から価値を作り出す仮想通貨と、その始祖と同名の語り手。真価が見えない世相に、それぞれをリンクさせる意図だろうけど、糸が太すぎて、本体にかぶって見える。
一日付けの新聞紙面など読めたものではない。各地で演出ではないふうに陶酔を装う演出に恐怖を感じる。元号が交替したところで、いったい何が新時代なのか。いったい何の幕開けなのか。政治、経済、法や商い、医理工に教育、その他、市民の行住坐臥に関与することはない。残るはブンカ。駆け込み寺か。
立派な、あるいは尊敬する人物について書かれたウィキペディアの但書(もっとも書き)──もっとも○○からは××との指摘があるがこれには沈黙を通している、のたぐい──には知性を強く感じる。自分は特定の人物にカリスマを意識することはない。憧れはあっても全部に惚れるという気持ちにはなれない。
中日新聞紙上で鼎談だか、もう数名いたか。官邸への同紙記者の質問内容を巡って、論者のひとりである大学教授が、揚げ足取りを避けるために事前に質問内容を精査する必要がある旨述べ、これに対し魚住さんは、それでは質問などできないと反論していた。教授周辺にトーンポリシングが漂うが査定は困難。
トーンポリシングという語を知る。日本語でいうと「語調統制」に相当する。「目上に対してその言い方はなんだ」とか「まずは落ち着け」とかのあれ。敷衍されやすい概念で、使用には注意が必要であると思う。トーンポリシング・ファッショとの概念が口に上り、権勢のある側に加担するという懸念がある。
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