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自家製トピック
お伊勢さん菓子博2017
( 近所はおろか世界も知らない )
2017年4月25日(火)
天赦日とはまことにお日柄もよく。偶然とは言わせません。

お伊勢さん菓子博2017が、伊勢にある県営サンアリーナで、21日から開催されている。招待券が手に入ったので、どうのこうの言いながらも、家内とふたり車で初日に出かけることにした。

会場である県営サンアリーナへのアクセスは渋滞もなく順調だった。矢印で誘導された駐車場は入場ゲートから離れてはいたが、無料で往復するバスが用意されていたので苦はなかった。道案内にも駐車場の管理にもたくさんの数の人が動員されていた。

昼前ごろの到着だったせいか、エントランス周辺は比較的すいていた。どこで何が催されているのかわからなかったので、とりあえず、ゲートをくぐったすぐ右側にあるサブアリーナに設置されたお菓子の匠工芸館に入ることにした。全国の菓子職人による花鳥風月をモチーフにした作品展とのことだった。

館内では、名古屋テレビのインタビューを受けた。名誉総裁賞をとった作品にとりわけ執拗にスマホのカメラを向けていたので目立ってしまったらしい。

ネクタイをいい加減に結んだ、俳優の田口浩正さんに似たインタビュアーが、「どうですか。この作品のどこに惹かれましたか」「この作品のいちばん好きなところはどこですか」などと似たような質問を重ねてきて、そもそも業界の人間がシロウトに浴びせる質問には、多数の形容詞や副詞が練りこまれていて、言葉で囲い込まれた相手が「イエス」か「ノー」で答えるしかない形式的なものだと思っていたのだが、このときは少し違っていた。

家内はてんから逃げ出してしまい、自分ひとりが田口さん似の相手をしてけっこうしゃべった。意識して正直に。だけど、自分の言葉を自分でも聞きながら、小さく胸の中でうずくものがあった。この人たちは、現場の驚きや感動を伝える仕事をしている。それならば、自分の手持ちのものよりも少しだけ強く言葉に含ませて伝えるほうがいいのではないか。そこでちょっとだけおどけてみせた。「途中で妥協して丸めたりせずに、さらに一歩進んでエッジを利かせた仕上がりになっているのがすごいと思います……」自分は偽善者であった。

覚えているのは、会場の一角で、「大道芸人ひろと」というストリートパフォーマーが、手品と大道芸を披露していたこと。終了後に袋に銭を投げてもらうのだが、そこに五千円札を入れた人がいたらしい。「五千円!」というどよめきは、しかし、彼自身にではなく周囲の見物人によるものだった。彼は手品師でもあるのだが、別に手品でもサクラでもなさそうだった。「あ、お気持ちだけ……小さく折りたたんで入れてくだされば……」という大道芸人ひろとの謂いが受けていた。

覚えているのは、お菓子にぎわい横丁のブルボンのテントで、ルマンドを6本包んでくれたおねえさんが、アイドルを上回るほど可愛かったこと。その彼女が話しかけてきた。お菓子と引き換えの整理券を見て、「早くからお持ちの券ですね。これは発行した直後のものです」とか言って白く並んだ歯を見せた。うんまあ可愛いわ、と家内も同意した。

覚えているのは、二時ごろ食べた、モクモクファームの屋台の豚丼とソーセージがおいしかったこと。

覚えているのは、福島県の170キログラムの饅頭を切り分けたものをもらったこと。

津に帰ってから、そのおすそ分けを実家に持参すると、母が出て自分の顔を見るや「おまえ何? いま伊勢とちゃうの?」と驚いていた。さっきのインタビューの映像が名古屋テレビで直前に流れていて、それを生中継だと思い込んでいたのだ。番組はまだ続いていて、画面上部には「中継」の文字があった。そりゃ現場にいる番組スタッフと中継で繋がっているというこっちゃ。

覚えているのはそんなとこ。この日に行くと決めたのは自分たちだし。

天気も天赦日もまずまず。


Update:2017-04-25 Tue 10:25:50 ページトップへ
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