自家製トピック
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所属という仮想体験
( 近所はおろか世界も知らない )
2014年11月19日(水)
待ちに待った海岸清掃。
六月の偶数組に続き、十一月は、奇数組の番である。
日頃より狷介不羈をよそおう自分の、しかしながら意外にも真摯な社会貢献ぶりをも世人に見せつけるための、数少ない機会である。

世の人といってもそれは、区の住民の半分、今回は奇数組の世帯代表者の総数と彼・彼女らの平均出席率を乗じたものなので、せいぜい百名ほどに過ぎないのだが。

もとより、勤労奉仕の本性は利他を旨としない。己のためにあると心得るべきである。自分のためにさせていただくという謙虚が必要である。いわんや、誰それの目を気にしながらの行動は、軽挙妄動にも劣る愚行である。
にもかかわらず今回、その勤労奉仕の精神には相容れない自分が、いさんで出席した。

町内会長は、二百八十世帯からなる区を分割して一組から十組まで配番し、ボランティアによる勤労作業のさいは、区民総出ではなく、奇数組・偶数組を交代で出席させるというやり方をしてきた。おそらくは、奇・偶の出席率において互いに競争心を煽る肚だろう。熱心な方である。

自分はたしか八組なので、今回の奇数組の参加とは無関係なはずなのだが、家内には、ボランティアとは要請されたからではなく出たいと思う己のために出るのだ、という理屈を捏ねて、意気揚々と七百メール東へ行ったところの海岸を目差した。偶数組からは、自分のほかには、年配者がひとり来ていた。区長の側からは、他の組からの応援ということで、まったく同じように接してもらった。

自分には、先に述べた、不埒な自己満足という目的があるので、組が違うのにと、いささか奇異を含んだ視線にも恬然と接し、「いやあ、強制じゃないからなおさらですよ」、などと気楽にうそぶいている。その一方で、体内には、分割された組の閾に拘泥する住民たちの行動を見下している目がたしかに存在するのだ。

作業は、前回の偶数組のときと同じく、滞りなく進んだ。小さなくふうも、ささいな不注意も、住民同士の軽やかなタメ口も、似たり寄ったりである。百名が集まると、総和では差異が出にくい。差異が出たのは、むしろ自分の中である。

作業に出ている住民は、全員が区の人たちで、いつもの作業仲間とは、奇数組と偶数組の違いしかない。しかし、自分がいつも出ている偶数組とは人が入れ替わっているせいか、まるで他の区の者のように感じてしまうのだ。
見たことがないわけではない。偶数組の集まりの中で見たことがないだけである。知っている人も多い。父がいる。従兄弟がいる。「ひろちゃぁーぁん」と呼びかけてくる見知った老婆がいる。にもかかわらず──。

ちいさく分割された相組のメンバーを、分割される前のより大きい相組のメンバーのように遠く感じる。それどころか、偶数組に所属する自分の、奇数組に対する矜持のようなものまで芽生えてくる。

──俺たち偶数組の時には、集めたごみの量がもっと多かった。
──奇数組は、従順すぎて、面白味がない人たちだ。

たとえば中学時代の体育の時間に、クラスを大きくふたつに分けられたとき、相手組に対する対抗心が、別のクラスへの対抗心よりも大きく育ってくるという経験をした。あのときのあれと似ている。

自分は、会社などの組織に長くは属せず、たとえ属したとしても、一個、人としての行動がものをいう仕事をするより他はなかった。所属を分けられることはこういうことか。組織に属するという気分はこういうことか。たとえわずかな味わいでも、不慣れな舌には鋭敏に感じる。

権力者は、支配される側を分割する。
分けられた側のそれぞれに「長」が発生し配下をさらに分割する。
これらの行動は、人を従わせようとする意図がある以上、避けようがない。

あとは、その意図の中に練りこまれた奸策に、個人が気づくか、気づかないか。
己の小さな企てなど、まったくもって論の外である。

Update:2014-11-19 Wed 12:01:27 ページトップへ
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